1997年3月2日
(快速 ムーンライト)→【新宿】着5:10−(山手線経由)→【上野】発6:03−(普通)→【水戸】着8:06--(路線バス・徒歩)--【臨 偕楽園】発(9:08〜9:15、前後の駅より)−(普通)→【水戸】着9:15,発9:45−(普通)→【湯本】着11:04、発12:49−(普通)→【いわき】着12:57、発13:42−(普通)→【仙台】着16:17,発16:40−(普通)→【一ノ関】着18:20、発19:00−(普通)→【盛岡】着20:32、発21:04−(普通)→【厨川】着21:10
※この日で訪れたことのない県がなくなった。また、そのようなルートをとった。わざわざ常磐線を経由したり、盛岡までいったのもそういうためである。
ムーンライト号が5:10に新宿に到着する。ここから上野駅まで行って、常磐線に乗らなくてはならない。中央本線だと乗換があるので、そのまま山手線で上野まで行く。どうもこの路線には太陽が出ているときに乗ったことがない。「全線完乗」としたときも、朝の4時台だった。どうも東京は近寄り難く、離れたくなる。今回も上野駅から一目散に東北方面に逃げようと考えている。もしかしたら、JR全線完乗が東京都のどこかになってしまうかもしれない。それも中央本線の新宿−東京間になるかもしれない。山手線は嫌いな路線の一つであるが、大阪環状線は好きな路線の一つである。現に、この文書作成時現在のJR路線完乗地図を見てみても、「関東嫌い、関西好き」が、露骨に出ている。もっとも、大阪へは普通列車で6時間程度で行けるが、東京へは特急(在来線)で、6時間かかるという、距離の差も影響しているのは確かである。
しかも、新宿から上野まで行くのに品川を回ったか田端を回ったか覚えていない。とにかく上野駅に着いたことだけ覚えている。
今回の旅の最大の目的は「行ったことのない県をなくす」ということである。そのため、同行のN氏を巻き添えにしているが、とにかくそういうことである。この時までに行ったことのない県は茨城県と岩手県だけである。順調にいけば今日中に全県制覇になってしまう。記念すべき日である。
まずは茨城県であるが、東北本線経由でも東北本線が古河市を通っているため、茨城県に足を踏み入れたことになる。それでも良いが、せっかくなので県庁所在地も行っておきたい。それと、東北本線だと青森まで行かないと完乗にならない。しかも、東京付近に何本か「別線」があったり、仙台で「枝線」があったりと、ややこしい。完乗線区を増やすためにも常磐線経由で仙台まで行くことにした。
上野駅の常磐線をはじめとする各路線のホームは、「頭端式」で、ホームの奥に改札がある。そのホームに比較的長い列車が何本も停まっている。時間の関係で普通列車だけだが、特急や寝台列車も多く停まる。金沢行きの特急「白山」、寝台特急「北陸」、福井行きの急行「能登」もここから発車する。あまり好きではない東京の中でも落ち着ける場所である。かつては様々な特急が発着していた。北陸新幹線が長野までできると本当にこのホームから特急が少なくなってしまう。
上野駅を発車して、日暮里まで東北本線を走る。「東北本線」の守備範囲は広く、東北本線そのもの、つまり小山・宇都宮方面へ行く列車や、常磐線、あるいは京浜東北線・山手線も「東北本線」を通るし、よく考えると金沢・新潟・長野方面へ行く列車も大宮までは東北本線を通る。
お寺のそばに墓場がたくさんある。東京の、山手線近辺はビルだけだと思っていたが、このような景色もあるようである。
常磐線に入って、どんどん都心から離れていく。気分的にも楽になっていく。こちらは普通列車に乗っているが、どんどん駅を通過している。つまり、普通列車以下の列車、緩行(各駅停車)が停車する駅である。そうなるとこちらは快速のような気もするが、実は緩行列車と普通列車の間に「快速列車」というものがある。普通列車のことを時刻表では「中距離列車」というが、とにかく、「快速」は「各駅停車」に対する「快速」であって、「普通列車」に対する「快速」ではない。関西の東海道本線では、時刻表上「緩行」を「普通」あるいは「各駅停車」といい、「普通」列車を「快速」として、そのうえに「新快速」を走らせるということで、矛盾は起きていないし、ホームにいても分かりやすい。どちらにしても、地方の人間には日常的な話ではないので目くじらを立てる必要もないが。
このようなおかしな列車が走っている区間も取手で終わり、取手からは純粋な「常磐線」となる。走っている列車も近郊型のセミクロスシートの列車と、特急列車で、非常に分かりやすい。しかも、取手に着いたということは茨城県に入っていることになる。これであと、行ったことのない県は岩手県だけになってしまった。
同時に、景色は新興住宅地となってくる。東京へ通う人で一戸建てを持とうとするとどんどん郊外へ出ていっているようである。新しくて、同じ形の家がたくさん並んでいる。牛久沼を見ながら関東平野を進んでいく。「荒川沖」もなぜ「沖」なのかよく分からない。金沢にも海沿いでないのに「入江」というところがあるし(昔そこまで海が来ていたという形跡もない。)このへんは、どうでも良いことにする。
土浦あたりで筑波山も見える。霞ヶ浦も見えるが、湖西線のようにたっぷりと湖を見せてくれる路線でもないので、「霞ヶ浦が見える」くらいである。
友部で水戸線が合流してきて、しばらくして偕楽園の前を通り、8:06、水戸に到着する。
せっかく来たことのない県に来たのだから、偕楽園まで行くことにする。駅前からバスに乗り、しばらくして到着する。少し歩くと入ることができた。兼六園のように入場料を取られることを覚悟していたが、どんどん中へ入っていくことができ、しまいに中心まで来てしまった。無料で入ることができるらしい。ちょうど梅の時期で、観光客も多かった。
帰りは臨時駅の偕楽園駅から乗ることにする。偕楽園−水戸間はさっきも乗っているので空白区間はできない。この駅も営業時間のようなものがあり、ここへ停車する列車の時間帯は決まっている。さっき乗った列車はこの駅には停車しなかった。今から乗る列車は今日2本目らしい。
偕楽園駅のホームに登るところで、小さな子供が階段を上ろうとしていたらその子の母親らしい人が「ここは電車に乗る人しか登っては行けないの。私たちは電車に乗らないの。だから登っては行けないの。」といって注意をしていた。その子にはきちんと伝わっていたかどうか分からないが、ずいぶん論理的な怒り方をする人である。
偕楽園駅から普通列車に乗り水戸駅に戻る。それからいわき行きの普通列車に乗る。水戸の次の勝田までは多くの普通列車が走っている。その後、地図上は海沿いを走っていることになっているがほとんど海が見えない。山が海まで迫っているという地形でない限り、わざわざ鉄道施設が錆びやすい海沿いのルートをとる必要もないのだから当然である。現に北陸本線でも、平野部はほとんど海が見えない。
海が見えないなりにも日立のあたりと勿来のあたりでは太平洋を見ることができる。なお、勿来から福島県に入る。これで、今まで来たことのなかった茨城県を縦断したことになる。
そのまま乗っていると終点いわきまで行くのだが、温泉にはいるためにその2つ前の湯本で降りる。これも「駅前銭湯図鑑」のお導きによるものである。駅を降りてしばらく歩くと「さはこの湯」というものがあった。温泉で、入浴料も安くてきれいなのだが、あまり広くない。昼間だったので良かったが、夕方など多くの人が来る時間になると大変であろう。あと、サウナ(=水風呂)がないため、あまり長く入っていることができない。見知らぬ人に話しかけられる。どうも旅行者とは思わなかったらしい。どこから来たかという話をしていたが、石川県という答えが意外だったらしい。新幹線で来たのかという話をしていて、普通列車という話をした。なお、この時は同行者N氏は長く入っていられないと行って上がった後だった。
湯本からいわき行きの普通列車でいわきまで行く。売店で適当なものを買って昼食とする。
いわきから仙台行きの普通列車に乗る。いわきからは一部単線になり、幹線であることを忘れ去れる。常磐線は東京と仙台を結ぶもう一つの路線であるが、実際はその途中の各都市と東京を結ぶ役割が大きい。そのため、東京から離れるほど輸送密度は小さくなる。特に特急については、途中までというものが多く、東京から離れるほど本数が少なくなってくる。以前は東北本線の別線として直通列車が多かったが、新幹線ができてその役割は薄れている。
あまり大きな駅でなくても、発車前の合図はきちんと鳴っている。JR東日本に多く見られる慌ただしい音楽である。これを聴くとJR東日本の区域にいると感じる。大糸線では南小谷ですでに聴くことができるし、東京近郊でもそうだし、青森駅でも同じものを聴くことができる。
相馬を超えて2駅が過ぎ、宮城県にはいる。常磐線もだんだん雰囲気的に細くなってくる。そして、岩沼から東北本線に合流した瞬間に路盤の幅が必要以上に広くなる。複線区間なのだが、線路のまわりや、2本の線路の間にもう何本か線路を増設できそうな用地がある。
そして仙台に到着する。仙台駅そのものは2年ほど前に来ているし、帰りにここから高速バスに乗る予定なのでそのまま北へ向かうことにする。
仙台ではひっきりなしに普通列車が発着している。それぞれに行列もできている。そして、ロングシート車が多い。少し前までは北陸本線と同じような普通列車が走っているところというイメージがあったが、新型普通列車が走り出して変わってしまった。
このあたりから空は暗くなり出して、あまり外はよく見えない。
仙台を出て、2つ目の岩切で東北本線利府支線が分岐する。そのうち乗らなくてはならないが、今回は乗らない。
それからしばらくして、仙石線とオーバークロスして松島海岸を眺めることができる。同じJRなのにオーバークロスするというところは仙石線が元私鉄であるということの証拠である。
このあたりから本格的に外が暗くなってくる。松島を過ぎたあたりからよく外が見えない。
小牛田を過ぎて、5駅目の石越までが宮城県である。そのあと、もう一度有壁あたりで宮城県に入るものの、石越と油島の間に宮城県と岩手県の県境がある。ここをこえることによって、すべての都道府県に足を踏み入れたことになる。
石越を過ぎて、上り坂を走っているのが分かった。ロングシートなのでこのあたりはクロスシートよりも分かりやすい。そして、その上り坂が下り坂に変わるのが分かった。おそらくその瞬間に岩手県に入ったものと思う。外が暗いのでよく分からないので、そう推定することにする。これで、すべての県に行くという目標を達成することができた。外国へ行く前に全部の県をまわってから、と思っていたが、まだ外国へ行っていないのでこれは守ったことになる。なお、この旅から2年半ほどしてこの文章を書いているが、全部の県をまわったのでもう外国へ行っても構わないのだが、まだ海外へ行く機会がない。
一ノ関で岩手県の地面を初めて踏む。ここで夕食をとる。
一ノ関から盛岡まで普通で1時間半もかかる。この、仙台−盛岡−青森という、県庁所在地間の移動は時間がかかる。岡山−広島という移動も時間がかかるが、このあたりの感覚は福井−金沢−富山という移動の感覚でいると、思ったより時間がかかるということになる。北陸3県内の県庁所在地の間は意外と近いのである。
このあたりの普通列車は少し前までは客車列車が中心であったが、秋田地区から順に新型普通列車は入ってきて、客車列車がなくなってしまった。そして、ロングシートだけの列車が2両編成などで走っている。さすが新型普通列車で、加速はものすごく良い。というより、加速の音がけたたましい。独特の音である。しかし、すべてロングシートになったというのがどうもいやである。外がよく見えない。客車からロングシートの新型電車という急激な昇進を果たしたのであるが、どうも乗っていて面白くない。
このロングシート車は積雪地帯を走るため、駅に着いたら全部の扉が一斉に開くということを年中することができない。北陸ですら、デッキのない車両は12月から3月まで半自動である。東北ではもちろん冬の間だけでも半自動にしなくてはならない。この列車は駅に着いたらボタンを押さないと開かないという仕組みになっている。冬期間だけでなく1年中のようである。車内には開くボタンと閉じるボタンがあり、車外には開くボタンしかない。ボタンを押すと警報音が2回鳴ってドアが開いたり閉じたりする。見ていると、降りるときに最後の人が閉じるボタンを押して閉まるまでの間に降りるという「心遣い」をしている人がよくいるようである。たしかに、北陸でも、半自動ドアの期間、長時間停車の時、最後に降りる人がドアを閉めるというのが隠れた「マナー」となっている。これをこの仕組みのボタンですると、このような技を使うということになるのである。やってみると、多少の慣れは必要であるが、楽しい。
一ノ関から北上、花巻といった主要都市を通り、盛岡に着く。盛岡から、「駅前銭湯図鑑」に珍しく乗っている健康ランドに近い厨川まで、八戸行きの普通列車で行く。
厨川から少し歩く。雪が降っていて、少し積もっている。歩道もアイスバーンになっている。北陸からここへ来て冬に戻ったようである。