JR各線を巡る旅の記録

29 東北沿岸部 5日目


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5日目・2000年8月17日
 【北上】8:07発−(普通)→【花巻】8:18着、10:34発−(普通・釜石線・山田線経由)→【宮古】14:36着、14:46発−(普通)→【岩泉】16:23着、17:20発−(普通)→【茂市】18:12着、18:31発−(普通)→【盛岡】20:40着
 もしかしたら乗れないのではないか、廃止の方が先になるのではないか、あるいはもしかすると完乗をここで迎えてしまうのではないか、と思っていた難易度の高い、1日3往復しかない岩泉線、ここを乗ることを第一条件に、釜石線と山田線を乗車。山田線の海岸部分は昨日も乗っている。また、山田線の茂市を過ぎてしばらくすると真っ暗になってしまった。仕方がない。

●北上−花巻(東北本線)

 ゆっくりと起き、風呂に入り、北上駅へ。6時台に起きると、北上線を往復して、戻ってくることができたのだが、起きられなかったことと、あることをしたかったので、やめておく。

 北上から、もう見慣れたロングシート車で花巻へ。市街地を過ぎると水田と住宅である。村崎野の前後で工場が多くなる。そうして花巻。

 花巻駅も見覚えがある。ここで実は2時間以上もある。昨日、洗濯をして、結局、乾かなかった。ということで、着る服がない。とりあえず、昨日と同じ服を着ているが、服は毎日変えたい。風呂には旅に出るとなぜか1日2回は入りたい。それはそうと、着る服がないと…。ということで、花巻駅の裏にコインランドリーがあることが分かっていたので、いってみる。金沢にもあるチェーンのコインランドリーで、広々している。青森の時のように狭いところでやらなくてもいい。とりあえず、今着ている服を除いて、すべて洗濯してしまう。

 その間に、近くのコンビニで、朝食と昼食、おやつを買う。それから、花巻電鉄だったか、旧私鉄あとを少しだけ歩いてコインランドリーに戻る。乾燥をして、折り畳み、カバンにしまう。そうして花巻駅まで戻り、トイレで着替える。これでどうにか、人並みの生活に戻ることができた。これだけ日程が長いと、洗濯をする時間を意識してとる必要がある。

 少し早めにホームへ行き、待っていると釜石線の列車が入ってきた。

●花巻−釜石(釜石線)

 この列車、ワンマン運転なのだが、途中の停車駅の到着時刻まで自動放送で言っている。ダイヤ改正の度に作り直すのか、一部修正するのか。それと、この路線、エスペラント語での愛称を各駅に付けており、自動放送でそれも言っている。エスぺラント語は、世界標準語として誰かが作ったのだが、結局広まらなかったもの、なのだが、どういう意味があるのか。確かにちょっと不思議な感じは受けるのだが。

 花巻を出て、市街地から水田の多いところになる。水田の中の住宅は、昨日の東北本線で見たように、富山の散居村のような感じである。建設中の高速道路をオーバークロスして似内。住宅がなくなり、水田と畑。そうして山へ入る。濁っている川を渡る。軽く山を越える。水田になり、少し住宅が増える。水田と畑の上に急に新幹線と駅舎が現れ、新花巻。今まで空いていた車内が急に混んでしまった。

 新花巻を出ると、水田と畑、木も混じる。そうして小山田。段差のあるとても広い谷を走る。広すぎて谷という気がしない。盆地というのか。水田が中心で家が少ない。段差があるので高原的である。軽く山を越えて、段差のないところに町があり、土沢。段差のない谷に水田が広がる。谷が少しずつ狭くなる。川があり、それに沿って林がある。そのため、川面はほとんど見えない。農家が多くなり、晴山。住宅地を抜け、谷に段差があり、水田。谷が狭くなる。川も見えるようになる。狭い谷に入っていく。濁っていて岩が混じっている川と、道路、そしてこの釜石線だけの谷になっている。発電所も見える。トンネルを抜け、若干谷が広がり、水田と住宅のあるところになる。その中で岩根橋。谷が深くなり、谷の中で川がさらに深い谷を作る。対岸に若干の水田と住宅がある。トンネルを抜け、さっき見えた川と住宅のある谷へ。若干段差のある谷に、水田と住宅。小川が並行する。住宅が増えて宮守に到着する。

 宮守を出ると、登っていく。町を見下ろし、山の中へ。さらに登る。新型気動車でも大変そう。登り切って、水田のみになる。平坦そうなところで、軽く山を越え、トンネルを抜けると川と水田のある谷を見下ろす。線路の手前で川が蛇行する。少し住宅があり、柏木平。やや広い谷に水田を見て、その奥にある谷の一つ、川のある谷へ入っていく。川と道路、釜石線と若干の水田のみがある谷である。少し住宅が現れ、鱒沢。水田が多くなり、谷が広くなる。川には林が並行する。少し住宅があり、荒屋前。さらに水田が広がる。道路の標識を見ていると、遠野市に入ったようである。小さい川にかかる橋を架け替えるための新線が並行している。住宅が増え、岩手二日町。同じように広い谷に水田が広がり、綾織。一時的に谷が狭くなり、川も近づく。しかし、すぐに広がり、水田が広がる。川を渡り、前方に広がる町に入っていき、遠野に到着する。石造りの趣のある駅舎である。

 遠野を出ると、住宅地を抜け、少し木が混じり、田のある谷に入っていく。途中、若干の住宅や、トウモロコシ畑がある。そうして青笹。そのまま広い谷を走る。水田中心であるが、トウモロコシ畑もある。その他、葉たばこ、まめ、リンゴ、果樹など。馬もときどき見える。住宅が増え、岩手上郷。広い谷を走っていたが、その縁にある一つの狭い谷を選んでそこに入っていく。あまり段差がない。水田中心だが、畑もある。家もあまり多くなく、平倉。少しずつ谷が狭くなる。牛がいる。さらに狭くなり、木が多くなる。トンネルを抜け、さらに狭くなる。少し住宅があり、足ヶ瀬。「発車は12時です」ということをワンマンのテープが言っている。急行「陸中」とすれ違う。4両だが、立ち席がある模様。

 足ヶ瀬を発車後、谷が深くなり、トンネルへ。下っているようである。抜けて、急な谷を見下ろす。道路がなく、川が見える。トンネルを抜け、谷底に水田と若干の家が見える。さらにトンネルを抜け、さっき見下ろしていた谷の高さに近くなり、上有住。少し長いトンネルを高速で下る。その後、隙間から深い谷を見ながら、高速で下っていく。トンネルをいくつか抜け、下に谷を見下ろす。今から走る線路と陸中大橋駅を見下ろすことができる。実はこの部分、ヘアピンカーブになっているのである。道路なら酔ってしまうのでイヤになるところだが、鉄道なら大歓迎。下に線路が見えるのは面白い。この部分を意識して、花巻で右側に座るか左側に座るか決めたくらいである。そうしてゆっくりとトンネルへ。耳がおかしくなる。カーブしているようである。これがヘアピンカーブの部分のようである。さらに下っている。ゆっくりとトンネルを抜け、陸中大橋に到着する。普通列車とすれ違う。さほど混んでいない。

 陸中大橋を出ると、今度は向こう側に見える山に、今まで通ってきた線路を見ることができる。単線・非電化の線路はほとんど目立たない。道路と違って、きれいに自然に調和している。田畑と住宅のある谷を見下ろし、そこへ降りていく。住宅が多かったがそこは通過し、しばらく走り、やや住宅のあるところで洞泉。畑と住宅のある谷から、水田と住宅のある谷になる。新しい住宅が多いところを通り、割と家の少なくなったところで松倉。若い人が多く乗ってくる。道路に並行し、店や自動車会社などがある。その中で小佐野。お互い、難所を通り抜けてきた線路と道路が並行して走る。町に近づいていく。トンネルを抜け、住宅・団地が増え、工場の建物、煙突が見えてきてきれいな川を渡る。そうして昨日も来た釜石に到着する。

 釜石では、結構長く停まる。しばらくしてからホームを降り、改札へ行ってみると閉まっていた。とりあえずくぐり、駅前にさっと出たあと、いいのか悪いのか、また戻る。そうしてさらに長時間停車を過ごす。

●釜石−茂市(山田線)

 釜石から進行方向が変わることを知らず、前に別の人が座り、結局逆走することとなってしまった。そのうえ、海とは反対側になってしまった。別に昨日、ゆっくり見た景色なので、今日はどうしても見なくてはならないものではない。進行方向逆側で、しかも、海に沿うもののアップダウン、カーブの多い区間。下手をすると酔ってしまう。さっきからずっとメモをとっていて疲れたので、ここから宮古までは、居眠りでもすることにする。個人的に「回送」状態である。

 そんな感じで、昨日通った線路を、逆に走る。そうして宮古に到着。宮古で乗り換える列車は1両のみ。ロングシート部分のない列車。クロスシートであるが、固定の、片方向だけの車端部にある座席。そこに座ることとした。

 宮古を出ると、広い道に並行し、住宅がある。トタン屋根が多い。そうして千徳。家が少なくなる。左側に川が並行。林に覆われているところも多い。谷としては広い部分であるが、川とその岸でかなりの部分を取られている。そうして花原市。川と道路が並行する。隣の道路を走っている車に追い越されたり、併走したり。田もたまにあるが、少ない。住宅が現れ、蟇目。谷がさらに狭くなる。川に沿って走る。川を渡って、今まで反対側の窓にあった川がようやくこちら側に来る。しばらく見てトンネルへ。何度か渡り、結局向こう側に川があるときに住宅が増え、茂市に到着する。茂市ではしばらく停車する。そのまま、盛岡に向かわずに、岩泉まで直通するが、停車時間を見ると別系統のような感じである。本当はこういうところを時短していただければ、あとからの部分、明るいうちに通ることができるのだが…。

●茂市−岩泉−茂市(岩泉線)

 茂市駅ではタブレットやら、赤と緑の旗など、懐かしいものを使っている。以前はかなりあったのだが。少なくとも、地元では。茂市を出て、すぐに山田線と別れる。少し広い谷に住宅と川。住宅がなくなり、田畑になる。谷が狭くなり、川中心の谷になる。少し谷が広くなる。段差が出てくる。水田と畑が半々の割合で広がる。住宅が少し増え、工場があり岩手刈屋。住宅が少なくなり、段差のある谷に水田。川が並行するが、例によって林に覆われている。その後は住宅が少しあり、畑も多くなる。トウモロコシやたばこなど。住宅が少し増え、中里。段差のある谷に、水田と畑、住宅を見下ろす。まん中に木の列があるが、川である。並行する道路が狭いので、全くじゃまにならない。少し住宅が増え、岩手和井内。ここが終点になる列車もあるので、ここ以降、1日3往復となる。本当に時刻表には3本しか列車が書かれていない。気分的に降りたくなっても、降りてはいけない。

 岩手和井内を出ると、谷が狭くなる。トンネルを抜け、川を渡る。川幅もかなり狭くなっている。林の中を通る。木と木の間から、ときどき水田と住宅が見える。非冷房車なので、窓を開けているが、入ってくる風が冷たい。特に、トンネルの中がそうである。谷が狭くなり、木と川が中心になる。ときどき、その林の中に住宅がある。たまにトンネルを通る。並行する川がとてもきれいである。並行する道路は1車線のみで、とても狭いのだが、国道番号がついている。国道の割にはじゃまにならない、景色の中にとけ込んだ道路である。絵はがきになりそうなきれいな小川が森の中を流れている。そういう中で、小さな吊り橋があり押角。降りていってその吊り橋を渡りたい気分である。住宅が1軒しか見あたらず、そうして川を渡る。小川と木、狭い国道だけの景色。その後、長いトンネルへ。抜けて、川と、依然として狭い道路を見下ろす。細かいトンネルをいくつか抜け、さらに谷底が深くなる。底がよく見えなくなってくる。向かい側の山は結構高い。そうしてトンネルを抜け、川面と道、少しの家が見える。トンネルを抜け、すぐ下に、川と道を見る。トンネルを抜け、少し広い川と、数十メートルだけ二車線になった道があり、住宅と田畑があり岩手大川。老人3名が降り、若者と老人2名ずつ乗ってくる。

 岩手大川を出ると、道路が2車線になる。川も少し広くなり、流れる方向が変わっている。進行方向に向かって流れている。トンネルをいくつか抜け、水田も混じる。川幅はさっきより少し広いが、きれいな渓谷になっている。そうして浅内。川を見ながら、少し住宅がある。トタン屋根中心であるが、少し瓦屋根もある。道路の方は国道の分岐点になっているようである。「浅内休憩所」という小屋もある。川に沿っていたら、いきなり材木工場が広がる。並行する国道はほとんど車が通っていないが、観光バスが停まっていて、2人ほど降りていた。道路が悪いので、酔ってしまったのだろうか。地図上は、川が合流しているということもあり、川幅は広くなっている。ときどき材木工場がある。田畑も少しある。住宅が少し増え、二升石。谷が若干広がり、水田。川も広がり、並行する道も、道らしくなってくる。水田や家が増え、下っていく。きっぷの回収が始まる。ときどき谷が狭くなることもあるが、狭くなったところを抜け、町が広がり、その入り口で岩泉に到着する。

 岩泉駅は、列車の本数に対してものすごく広い。二階もあり、鉄筋の、ちょっとした主要駅ふうである。駅前も、結構広い。ただし、列車の本数が3本と、恐ろしく少ない。駅舎もかなり古くなっている。駅前から、少し歩き、小本川を渡る。結構川幅は広くなっている。橋を渡り、少し歩くと町になってくる。郵便局があったので、少しだけ資金をおろしておく。その他、少し町を歩いてみるが、主要な観光地へ行く時間もなく、適当に歩き、駅に戻る。駅にはなぜか若者が多い。おおよそ、列車に乗らないような外見だが、本当に列車に乗らないようである。地元の人なのか、遠くからのツーリングなのか。

 戻りは、行きに詳しく見た景色を何となく眺めて戻る。行きで詳しく見ることにエネルギーを使うと、どうしても帰りはぼーっとしてしまう。ただし、やはり岩手和井内と押角の間の、何ともいえない川と森の景色に再び見とれてしまう。なかなか乗れないと思っていた路線であるが、かなり景色のよい路線ではないかと思う。

●茂市−盛岡(山田線)

 朝から結構、待ち時間というものがあった。花巻で洗濯をした時間、釜石での長時間停車、茂市から岩泉方面へ向かうときの長時間停車、岩泉での折り返しに結構待った時間、そして茂市での乗換の時間。そういう時間を過ごす間に、刻々と夜が近づいているのである。つまり、この茂市−盛岡間、かなりの部分が日没後にならざるを得ない状況なのだ。しかし、列車の本数と接続から考えて、この山田線・釜石線・岩泉線の乗りつぶしは完全に昼間で乗ってしまうことは難しい。仕方がない。今度時間があれば改めて乗ることにし、今回は外を見ることができる間に外を見ておくことにする。

 列車が入ってくる。さっき、宮古からこの駅までは1両だったが、今回は3両。そんなに混んでいるのかと思ったが、結構空いている。茂市を出て、岩泉線と別れすぐにトンネルへ。川に沿った谷を走る。水田がなくなり、道と川だけが見える。川の向こう岸には岩の絶壁が少し見える。そういうときもあれば、田畑があるときもある。川も段々と渓流になってきた。川も道も山田線も、一緒にカーブする。そうして川や道路と別れ、トンネルへ。抜けて腹帯。明かりの方が目立つ時間になってきた。そうして、川幅はさっきよりも少し広くなる。田畑もある。川を渡る。しばらくするとかなり岩が多くなっているようである。川の対岸の道路の明かりがかなり目立ってきた。水田と住宅があるようである。そうしてトンネルへ。川面の反射光が若干見える。しばらく川に沿う。住宅があり、陸中川井。さっきの腹帯もそうだったが、高校生が数人降りていく。車内は一段と寂しくなる。住宅が減り、川に沿って走る。川幅は狭くなっているよう。水田、トウモロコシ畑、たばこ畑などが確認できたが、これ以上景色を見ることは難しい。明るさが限界になってきた。これ以上は、谷の中の闇を走ることになる。

 箱石駅の裏にはひまわりが多く咲いていた。その他、トウモロコシ畑、水田程度は、何となく分かってきた。川内では駅員が青色灯を持っていた。発車ベルも鳴っている。この駅折り返しの、宮古からの列車もあるようである。この駅を発車後、車掌は全停車駅を案内し、編成の案内、携帯電話をお持ちの方へのお願い等を言っていた。この駅の前までは、次の停車駅は○○で、到着時刻は○時○分です、という案内。若そうな車掌で、結構丁寧であった。

 丁寧な車掌とは反対に、車内はかなり寂しくなっている。この車両、3両目は、自分も含めて2人しかいない。並行する道路が素晴らしいのかと言えば、余りよくなさそうである。こちらも結構ゆっくり走っている感じがするが、それとほぼ同じ速さで車が流れている。

 区界では12分停車。駅名や、宮古−盛岡間のバスも停まるということもあり、ちょっと気になっている駅である。明るくなければどういう状況なのか分かりにくい。コンビニや土産物屋の明かりが見えるが、民家の明かりは見えない。それからさらに暗闇の中を走り続け、町になってきて盛岡に到着する。

●盛岡で

 盛岡に到着する。とりあえず夕食、と思ってちょっと駅を徘徊してみるが、結構閉まっている。地下へ行ってみると、飲食街だけ空いていた。ステーキやさんが空いている。値段も手頃だし、入ってみる。なぜか、さいころステーキと讃岐うどんのセットがあったので頼んでみる。よく分からない組み合わせ。

 今日は盛岡駅の近くにあるカプセルホテルで宿泊。駅前にあるようだが、どこだろう、と駅前を見回してみると、本当に駅前にあった。駅から遠い健康ランドが続いたあとは、駅に近いカプセルホテルが続く。有り難いことである。

 カプセルホテルとサウナ、別料金のようである。カプセルホテルだけなら2,800円、サウナもだと1,000円プラス。こういうところは風呂に価値を見いだす人間なので、迷わず1,000円追加する。ホテル自体は悪くないが、カプセルのすぐ前にロッカーがある。便利といえば便利だが、ロッカーを開ける音が一晩中響き渡っていた。  


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